2018/6/22付日本経済新聞 朝刊 ヒットのクスリ 「審査員特別賞が勝つ時代」 備忘録

〇同志社大学 太田肇教授の持論 「美少女コンテストのグランプリは活躍しない」
 オスカープロモーションが開催している「全日本国民的美少女コンテスト」の調査から確信した。

〇知名度が高いのは審査員特別賞や演技部門賞を受賞したタレントばかりで、代表例は、米倉涼子さんや上戸彩さん、モデル部門賞に選ばれた武井咲さんなどの面々。剛力彩芽さんは予選落ちだそうで。

〇太田教授によると、「グランプリは多くの人によってあらゆる角度から評価される結果、角が取れ、既視感のある人が選ばれるからではないか)とのこと。新規性や意外性が捨てられるので「化ける」可能性が低いということらしい。

〇ということで、これは商品やサービスにも通ずる話ではないか、とのこと。その例は、コンビニを始めたばかりのセブンイレブン、ヤッホーブルーイングなど。

ヤッホーブルーイングの事例が面白い。「水曜日のネコ」を企画したとき、大株主である星野リゾートの星野社長が「飲んでも軽すぎる」「デザインも気に入らない」とダメ出しを連発。そこで、ヤッホーの井出社長は「これは星野社長のようなビール通は残念ながらターゲット外。だからその印象は正解です。」と返し、発売を強行した。結局、「水曜日のネコ」は売れ続け、今も30%の伸び率だそうだ。

ヤッホーはターゲット層にインタビューしながら、表面化していないニーズをつかみ、商品化する、「万人受けを狙う既存のビール文化を変える」、まさに審査員特別賞を狙うような姿勢で面白い。

このような細かなニーズ調査が成否を分けるのだと思う。ニーズが大事と言葉では言いながら、「富裕層がターゲット」とか「30~40代の女性層が大事」とか言いながら、机上でおじさん達ばかりで、商品・サービスを考えることの多さはいかに。ニッチ分野(審査員特別賞)を攻めるのはいいけど、そこにニーズがなかったら、目も当てられない状況になりますよ、ホントに。

もう一つ、大株主の言葉に従わず、強行した井出社長の強さ。普通の会社でもよく見かける風景で、社員が必死になって考えたことを、感覚であっさりひっくり返しちゃう社長ね。こうなるともう、新しい発想や創造性なんて出てくるはずがなくって、”革新”なんて程遠い会社になってしまうよね。そういう意味でも、なんでも言える組織風土、従業員の”許容外の行動”を許せる経営層やリーダーの存在が、必要なんだろうなーと思う今日この頃です。